入社したばかりの会社で、「研修期間中は給料は出ない」と言われたことはありませんか。今回は正社員で入社しておいて給料は出ないのは違法かどうかを検証するとともに、新卒の入社前研修の無休の違法性についてもご案内します。
目次
正社員の研修期間で「給料なし」の実態
転職活動の苦労が報われて、ようやく就職が決まり正社員となった場合、多くの企業では転職組に対しても就職前後のギャップをなくし、新しい仕事を覚えてもらうために社員研修を実施します。研修期間は一週間のところもあれば、1ヵ月ほど長期にわたる会社も普通にあります。
一般的に研修期間中は職場に行くこともあまりないですし、セミナーのようなクラスを受講することもあります。しかし、問題となるのは、会社側から「正社員でも研修期間中は給料なしだからね」と通達されることです。
実は昨今は、この正社員にも関わらず研修期間中給料なしの問題が多発しています。その背景には、会社側は経費を支払って、研修を受ける正社員にセミナーを受講させたり、数百万円の高いコンサルタントを雇っているため、「その上給料を支払うなんてもってのほかだ」と考えている節があるからです。
では、この研修期間の給料なし問題は、法律の観点から違法なのでしょうか。
正社員の「給料なし」は例え研修期間でも違法行為
正社員は労働法で守られた無期限雇用を指し、正社員に対する給料は「業務のために時間を束縛した」瞬間から支払う必要があります。つまり、例え研修期間でも正社員の給料なしは違法行為となります。
しかし、違法ではないケースも1つあります。それは「任意の研修」です。例えば休日や平日の仕事が終わったあとに、セミナーに任意参加、という場合は、正社員が選択することができるため、給料なしでも違法とはなりません。ただし、そういったセミナーの任意参加に対して、無言の圧力(参加しなければならないようなプレッシャー)があったり、セミナーや研修期間の有無が正社員当人の評価に関わる場合は、やはり会社から与えられた業務の範囲内とみなされるため、給料なしは違法行為とみなされます。
もし会社側が研修は任意参加だと豪語して、無言の圧力もかけていないと裁判沙汰になるとしたら、まず十中八九正社員が勝ちます。それほど正社員は労働法や民法によって手厚く保護されているといえ、また、会社側の「無言の圧力はない」という見解よりも、正社員の「任意とはいうものの、実態は強制だった」という意見を裁判では採用されるケースがほとんどとなります。
正社員だけではない。新卒・中途内定組の入社前研修も無給は違法行為
正社員だけではなく、新卒が内定をもらって入社する前の事前研修期間も、実は無給は違法行為となります。新卒の場合、会社に早く慣れてもらおうと、入社日より前に数日間~数週間の研修を実施するところが多くあります。
「往復の交通費と食事代(500円)は会社側から支給された」というのが大半だと思いますが、扱いとしては正社員も新卒も全く同じ。例え入社前であっても、会社の業務として研修をしている以上、無給は許されません。もし研修中は無給と言われた新卒の方は、労働基準監督署に報告をするのもいいでしょう。
「入社前研修に行きたくない」けど参加を断ることはできる?
転職・就職先の内定が決まったあとは、入社日まではストレスから解放されて羽を伸ばして自由な時間を費やしたいところです。しかし、就職先から入社前にも関わらず「研修」や「懇親会」といった名目で任意参加を迫られることがよくあります。
この場合はあくまでも任意となるので、参加を断ることができます。しかし、参加を断ることができない状況にある場合もあります。その場合は会社の行事として内定者は社員として参加することになるので、当然のことながら賃金が発生するものとみなされます。もし参加後に賃金を受け取れないようであれば、違法性が高いということができます。
内定者研修で「eラーニング」は賃金が発生する?
内定者研修で入社前にも関わらず「eラーニング」で自宅でスキルアップを要求する企業も多くあります。eラーニングを迫る企業のほとんどは給料なしで賃金は発生しません。もちろんこれは上記の事例を鑑みても違法性が高いと言えます。
すでにイメージできるように、内定者の入社前あるいは入社後の研修で給料なしが違法かどうかは、「その研修が強制か否か」が分かれ道となり、これはeラーニングでも同じことが言えます。
ただ、仮に裁判をすれば100%勝つことができるものの、新しい職場で波風を立てたくないために、実際は給料を請求する人はほとんどいないのが現状です。
研修中に「給料なし」。人事に確認して必ず対処しよう
もし研修中に給料なしを告げられた正社員や新卒の方は、必ず何かしらの方法で声を上げるべきと言えます。会社側が正社員の時間を束縛しているにも関わらず、それに対して対価を支払わないというのは、ビジネスとしては明らかに不当となりますし、せっかく転職したのに、会社側にそのような姿勢を見せられたら残念ですよね。
正社員になりたての場合は試用期間中となるので、こちら側も会社を選ぶ立場にあります。しっかりと会社を見極めて、もし違和感を覚えるのであれば、まずは会社の人事に相談して賃金の支払いを要求するとともに、それが叶わないのであれば、退職するなり、労基に相談するなり、何かしらの対応をするべきと言えるでしょう。
入社前後の研修期間中の給料・賃金を請求したい場合の2つの方法
入社前後の研修期間中に発生した給料・賃金を法的にしっかりと請求したい場合は、「労働基準監督署」に相談するか、「自分で会社を訴える」方法が挙げられます。
しかし、労働基準監督署はあくまでも企業に対して是正処置を勧告するだけとなりますので、法的に企業が従う必要はなく、実際言う通りに研修期間中の給料・賃金を払ってくれるかどうかは分かりません。
一方で自分で会社を訴える場合は、「退職代行サービス」を利用するのが割安でおすすめです。
退職代行サービスで退職手続きと研修の給料請求を依頼
退職代行は退職手続きの代行が本業となりますが、退職時に各種請求の代行をするサービスも請け負っています。既に退職もしくは入社を辞める意思があるならば、退職代行業者に入社拒否と研修中の給料の請求を代行してもらいましょう。
業者の選定としては、単に入社を断るだけであれば民間の代行業者でも構わないのですが、給料などのお金が絡む場合は、退職代行を請け負っている弁護士事務所に依頼するのがおすすめです。
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