「会社の運営が傾いているから」、「取引先からの入金がまだだから」と理由をつけて給料が未払いのとき、確実に請求する方法をご案内します。給料の未払いは労働基準法24条の違反となりますので、上記理由での未払いは認められません。泣き寝入りしないで、毅然とした対応をとってください。
目次
給料を未払いの会社側の言い訳
零細や中小企業に多い給料の未払いですが、言い訳としては「いま会社が赤字経営だから、給料を払えない。もう少し待ってくれ」、「取引先からの入金が来月末にあるから、それまで待ってくれ」と言った理由が多いですね。多くの従業員は、同情の余地があると待ってしまいますが、果たして本当に期日になったら給料を払ってくれるのでしょうか。
そもそも従業員が労働契約を交わしているのは会社であって、取引先ではありません。会社側は労働基準法第24条に基づいて、従業員に現金を通貨で全額払わなければならない義務を背負っています。これに違反すると、30万円以下の罰金と法律で決まっています。
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
労働基準法第二十四条及び百二十条
第百二十条 第二十四条に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
会社が休業。給料が下がって生活できない!未払い分は請求できる?
コロナ禍以降に多い事例として挙げられるのが、「従業員に月数日の休みを設ける(シフトに入れない)」、「会社を月数日間休業させる」といったケースです。しかし会社側が、自社の都合により従業員の生活を不安定にさせてはいけないため、月の給料の6割以上は最低でも支払わなければなりません。もし未払いがあれば、その差額分は法的に請求することができます。
ブラック企業かも。給料未払いの驚きの理由
社員数数名から十数名の零細企業の場合、経理を知らないワンマン社長が自己中心的なお金の使い方をすることがあります。あらゆる商品やサービスをどんぶり勘定で購入したり、「経費で落とせる」と支出を気にしないで会社のお金を使うと、あっという間に資金繰りがうまくいかずにショートしてしまいます。
また、特定の従業員に対して「嫌いだから」という理由で意図的に給料を減らしたり、支払いを遅らせたりする社長もいます。そういった企業は漏れなく「ブラック企業」の括りとなるので、給料の未払いを請求すると同時に、早急に退職の手続きもすることをおすすめします。
中小企業で給料の未払い請求をしたい場合。労働組合には注意が必要
給料の未払い問題が発覚した際、最初の相談窓口として「労働組合」が挙げられます。労働組合のある職場であれば、まずは労組の役員に相談するのがセオリーとなりますが、ただし注意点もあります。役員も無論当該企業の従業員となるため、場合によっては会社経営者の息のかかった人間が役員の場合もあります。こういった労働組合は「御用組合」と呼ばれ、実際は経営者の思い通りに動かされる傀儡組合となっているケースが散見されます。
もし御用組合に給料の未払い請求の相談をしてしまった場合は、会社の上層部に筒抜けになってしまう可能性もあるため、注意が必要です。
労働法による「給料の未払い請求」の対象となるものは?
給料の未払いと一概にいっても、実は月に受け取る給料だけではありません。労働法では未払いを請求できるのは、月の給料だけではなく、会社が本来従業員に支払うべき「賃金」となります。その賃金の内訳は以下の通りとなります。
- 毎月の給料
- 退職金
- 賞与・ボーナス
- 休業手当
- 割増賃金
- 有給休暇
上記はすべて労働者が受け取る賃金に該当しますので、本来支払われるはずだった場合は正当に請求することができます。
労働基準法115条:給料(賃金)の未払いを請求できる期間・時効は3年!
給料の未払いは、在職中でも退職後でも請求することができます。近年労働法が改正され、給料の未払いの請求期間は2年から3年となりました。請求期間が過去3年となるのは、令和年4月1日以降に支払い期日が来た賃金となり、それ以前が2年となります。
言い換えれば、2年もしくは3年より以前の給料の未払いに関しては、時効となり請求できない可能性が高いです。
また、退職金の未払い請求は5年が時効となります。
給料の未払いを確実に請求する3つのステップ
給料の未払いを「ほぼ確実」に請求する手順をご紹介します。
請求までのステップ① 給料が未払いの証拠を集める
未払いの給料を請求するにあたって、まず従業員がやるべきことは、「給料が未払いである証拠」と「未払い給料の具体的な金額」です。証拠としては、
- 毎月給料が入金されている銀行口座の明細
- 給料の未払いに関する会話のやりとりの録音やメール
- 賃金規定が記述された雇用契約書と就業規則
- 出退勤を分単位で記載した日報(タイムカード可)
などが挙げられます。特に残業代を申請する際は、出退勤の記録は非常に重要となります。パソコンのログイン履歴やフォトショップのようなソフト内に記録されている履歴などでもかまいませんので、すべて写メを撮って記録しましょう。
未払いの残業代を請求する際の注意点
未払いの給料と同時に残業代も請求する場合、まず確認してほしいのが、「その残業は会社が指示しているのか」というものです。例えば会社が「今日は残業なしだから、みんな残業しないで帰宅してくれ」と指示があったものの、勝手に残業をした場合は、残業代を請求することができません。
その一方で、営業のように、目標達成に向けて会社や上司から無言の圧力があり、残業を強いられている状況下にあるときは、「黙示的な残業の指示」があったとして、未払いの残業代を請求することができます。
ステップ② 未払いの給料の請求を記した内容証明を送る
合法的に会社に未払いの給料請求を訴えたい場合は、内容証明郵便を送るのが一般的です。文面にルールはありませんが、下記は最低限明記するといいでしょう。
・入社日と退職日(まだ働いている場合は、「現職中」と記載)
・給料未払い期間(○○年○月~○○年○月)
・いつまでに振り込んでほしいのか(一般的には3週間程度の猶予)
・振込先銀行
・期日までに振り込まなかった場合の対応(労働基準監督署への相談や弁護士を交えての民事裁判等)
また、遅延損害金も含めて請求する際は、その旨も記載しましょう。
内容証明郵便で送れば、相手は確認したこととなるため、「そんな手紙届いていない・確認していない」といった言い訳は通じません。裁判でも有利に働くので、給料未払いの請求に実際に行動する前に送っておくといいでしょう。
ステップ③ 給料の未払い請求の件を労働基準監督署に相談する
本来ならば上記で集めた未払い給料の証拠は会社に提出して、支払いの請求をしたいところですが、会社側が高圧的な態度に出て証拠をもみ消そうとすることも考えられます。そのため、確実に未払い給料を請求したい場合は、会社ではなく労働基準監督署に上記証拠を持ち込み、相談するといいでしょう。
労働基準監督署にしっかりと訴えて会社の違法性が認識できれば、労基の担当者が会社側に是正勧告書を交付します。これは会社に対しての抑止力になり、驚いた会社側は早急に従業員に未払いの給料を支払うケースが多いです。
会社がブラック体質の場合は、労働基準監督署が意味を成さないこともある
ここで注意してほしいのは、労働基準監督署の是正勧告書やその他会社側に要求することは、すべて法的に強制力はないということです。ブラック体質の企業であれば、当然そのことは知っているので、労働基準監督署の意見など相手にしない可能性も十分考えられます。
場合によっては書類送検する例もありますが、かなり稀な事例となり、基本的に労基はそこまで深入りはしません。
請求までのステップ③ 弁護士に相談(示談or裁判)
最後のステップとしては、弁護士に相談することです。会社にとっては弁護士は最も恐れる存在となるので、労働基準監督署に相談せずに、未払い給料の証拠を集めたら、すぐに弁護士に相談するのもおすすめです。
「でも裁判になるのは嫌だ」と思うかもしれませんが、少額裁判(60万円以下)であれば1日で終わりますし、証拠があれば基本的に全額認められますので手間はかかりません。
また、弁護士が介入すると、会社は危機感に襲われるので、裁判をせずに即支払いをするケースが多いです。金銭問題で裁判沙汰になった会社に未来はありませんから。
未払いの給料に付加金(遅延損害金)も請求して会社に圧力をかけよう
未払いの給料、及び賃金を会社側に請求する場合、付加金と呼ばれる遅延損害金も請求することができます。この付加金は、会社側が未払い金の支払いが遅れたことによるペナルティのようなもので、未払い金額と同等の額を受け取ることができる可能性があります。
この付加金は裁判で請求することになるため、裁判に至らずに和解や示談をしたときは請求できません。ただし、会社に給料の未払いを請求するときは、この付加金も同時に請求することにより、脅しという意味合いで会社に圧力をかけることができます。
給料未払いのうちに会社が倒産!そんなときは「未払賃金立替払制度」を利用
給料が未払いのうちになんと会社が倒産、もしくは無期限の休業に陥ってしまった!このような事態になると、事実上会社側に未払い給料を請求することは困難となります。
しかし、日本は従業員を手厚く守ってくれる法律と制度がたくさんあるのでご安心ください。会社が事実上の倒産や閉店をしてしまった場合は、労働基準監督署や労働者健康安全機構が実施している「未払賃金立替払制度」を利用することができます。
この制度を利用する場合は2年以内請求する必要がありますが、認められれば未払い給料のうち、最大80%を受けとることができます。
まずは弁護士に相談をしてみよう!給料の未払い請求は速やかに解決してくれる!
今回は給料の未払い請求に関する解決方法をご紹介しましたが、最も重要なことは、やはり最初にどれだけ給料未払いの証拠を集められるかです。残業をしているならば、未払いの残業代も同時に請求できますし、会社を辞めるのであれば退職金も請求できます。
証拠を集めたら、あとは弁護士がすベての手続きや会社への交渉を代行してくれるので、こちら側ですることはありません。会社側は本当にお金がないわけではなく、単に渋っているだけかもしれません。そのため、従業員は毅然とした態度で未払いの給料を会社側に請求するべきと言えます。
弁護士に依頼すれば、請求できる未払いの給料を計算してもらえる
未払いの賃金が長期間にわたって発生している場合、通常は給料だけではなく、賞与や退職金、残業代なども未払いが発生しています。遅延損害金も含めて、未払いの給料の計算や証拠を自力で集めるのは、正直かなり骨が折れますし、すでに会社を退職している場合は、ある程度の泣き寝入りも覚悟しなければなりません。
一方で、弁護士に依頼すれば、給料の未払い期間や残業代、賞与、退職金を一括して計算して会社に請求してくれます。また、自力での収集が困難の場合は、会社側が保管している従業員の勤務時間の帳簿やデータの開示請求も可能です。弁護士費用は基本料金+出来高となり、当サイトで紹介している弁護士は基本料金が安いため、一般のサラリーマンでも誰でも利用できます。是非一度ご相談してみてください。
給料の未払い請求を依頼をする弁護士の選び方
給料の未払い請求を弁護士に依頼する際は、基本料金が安い弁護士事務所に相談するのがおすすめです。給料の未払い請求の案件はほとんどの弁護士が経験豊富のため、実績ではあまり差がつきません。一方で、弁護士によって基本料金は大きく差があります。給料の未払い請求を依頼する際は、「数万円程度の基本料金に20%前後の成果報酬+実費(書類郵送費用など)」で請け負ってくれる弁護士は、かなり良心的と言えます。反対に基本料金だけで10万円以上かかりそうな場合は、別の弁護士を探してみるのがいいかもしれません。
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