多くの人は、「どうせ会社を辞めるときはボーナスをもらった後に辞めたい」と考えるものです。しかし、有給休暇中であったり、退職届を出した退職月とボーナスが被ってしまった場合は、満額受け取ることはできるのでしょうか。
今回はボーナス(賞与)を有給休暇中にも関わらず満額もらって会社を辞める方法をご紹介します。
目次
夏・冬のボーナス (賞与) をもらってからすぐ辞めるのが最近は普通?
会社を辞めたい場合、通常は12月末や3月といった会社の年度末に合わせて退職するのが慣例かもしれませんが、最近はあまり重要視しない傾向にあります。特に決算月は営業や経理は追い込みで非常に慌ただしいので、その中で会社を辞めるのはなかなか困難です。
そこで、昨今の定番となっているのが「ボーナス (賞与) をもらった翌月末退職」です。なぜ翌月末かというと、「ボーナス月に辞めるというと、減額されそう」、「ボーナスを貰えるか心配」という理由から。会社側としては、もう辞めると分かっている人間にボーナスをわたすのは躊躇っても仕方がないかもしれませんね。
ボーナス前に辞めるのはもったいない?ボーナスまで待てない場合はどうする?
とはいえボーナス (賞与) が年に1回しかない会社もありますし、次のボーナスまでの数か月を待てるような職場環境ではない人もいるでしょう。
もし会社の給与体系がボーナス依存で、3か月や4か月分支給されると言うのであれば考えなければなりませんが、基本給の1~2か月分であれば、諦めてしまうのも1つの手です。会社を退職後、すぐに仕事が決まらなくとも失業保険で生活できますし、ボーナスのために心身をすり減らしながら働くのが必ずしも合理的とは限りません。
「正直体の限界。ボーナスまで待てない」という状況に追い込まれているのであれば、ボーナスを考えずに退職宣言しても何ら問題はないでしょう。
ボーナスもらってすぐ辞めるときはいつ言う?
ボーナス (賞与) をもらってすぐ辞めたい場合、会社側にいつ言うのが適切なのでしょうか。一般的にボーナスの支給日は5~15日の間となるのが一般的です。しかし、会社側と少しでも揉めないようにするのであれば、ボーナスを貰って1~2週間後に退職の旨を伝えるのが良さそうです。
もし当月末の退職を目指すのであれば、法的には2週間前に告げれば労働契約を解除できるので、15日くらいまでに伝えるように計画するといいでしょう。
ボーナス (賞与) の「もらい逃げ」と言われることは気にしない
ボーナスを貰ってすぐに辞めることを考えている人の中には、「周りからもらい逃げしやがって」って思われていることに気にかけている方もいます。しかし、全国的にボーナス月というのは退職者が多くいます。特に12月は期末ということもあり、退職者は非常に多いです。
また、会社に少しでも不満を持っている人からすると、もらい逃げした人に対して不満はなく、むしろ「次は私も……」と羨望の眼差しでみることもあるでしょう。
会社の先輩上司とも退職後は関係がなくなるので、仮にもらい逃げと悪口を言われても、気にする必要はそれほどないのでは、と考えられます。
ボーナスをもらって翌日に退職できる可能性と注意点
退職希望者の中には、「ボーナス翌日に退職したいけど可能?」という相談をいただくこともあります。
結果から言うと、「不可能ではないが注意が必要」です。
まず、社員と会社側が双方合意の上であれば、社員はいつでも退職することができます。
しかし、一般論として会社側が求める退職方法は社内規則に記載があるステップとなり、往々にして「3か月前に退職を申し出る」とあるのが普通のため、合意退職は難しいことが考えられます。
では法律に照らし合わせるとどうでしょうか。上記でも触れたように、法律では「社員が会社に退職を申し出てから14日後に労働契約は解除される※民法627条」とあります。
そのため、ボーナス翌日から遡って14日前に退職を申し出れば、法的にはボーナス翌日に辞めることができます。ただし、ボーナスを受け取る前に退職届を出すのだから、会社側がボーナスの支給額を減らす可能性があります。
後述しますが、会社は一度従業員に支払ったボーナスを返還させることは原則できませんが、支給前であれば、「ボーナスの支給額には将来の期待度も含まれている」と理由を付ければ、会社側は合法的に減額できる可能性があります。
「求人内容と違う!」こんなときはボーナスもらってすぐ辞めることができるかも
求人内容に記載されているボーナス(賞与)の規定や仕事内容、職種が実際に勤務開始後に大きく違うことが分かった場合は、実は即日で会社を辞めることができます。
上記では民法627条の法律をもってしても最短で2週間後の労働契約解除となりますが、労働基準法第15条によると、「明示された労働条件が事実と異なる場合、労働者は即時に労働契約を解除できる」とあります。ただし、「ボーナスの額が求人で教えてくれた額よりも少ない」という理由の場合、この法律が適用されるかは難しいところです。
会社のボーナスをもらってすぐ辞める!社内規則(就業規則)を確認
会社のボーナスをもらって辞めることを考えた場合、まずは会社の社内規則に記述のあるボーナスの支給項目を確認してみてください。なぜなら、ボーナスはあくまでも会社が決める従業員へのご褒美となるため、法律で支給の可否などは決まっていないからです。
会社の社内規則を見れば、ボーナスの支給条件の記載があるはずです。大抵は「ボーナス支払い月の末日まで在職している者」などといった条件が盛り込まれていることでしょう。まずは、その条件に自分が合致するかを確認してください。
退職月&有給休暇でボーナス (賞与) をもらって辞めることはできるのか
では、本題となる「退職月、及び有給休暇を使用中にボーナスをもらう」場合です。
例えば8月末を退職日として、6月に退職届を会社に提出。有給休暇が14日残っているので、8月中旬を最終出社日に設定。しかし、夏のボーナス支給日は8月25日。
このような場合、他の従業員と同じように満額ボーナスを受け取ることはできるのでしょうか。
まず前提としてボーナスの減額条件が社内規則に記載されていないことが前提です。
社内規則にボーナスの減額条件がない場合は、原則満額受け取ることができます。上述したようにボーナスは確かに法律による強制力はありませんし、支給するかしないかは会社が決めることとなります。しかし、ボーナスを受け取る条件が揃っており、ボーナスの減額条件が「その月に退職するから」、「有給を使っているから」という理由で、会社が闇雲にボーナスの支給額を減らすことはできないと考えられます。
退職金にも同じことが言えるのですが、ボーナスを支給する会社は、ボーナスが慣例となっているため、嫌がらせのように支給の有無を身勝手に決めることはできません。もちろん業績給の場合はボーナスが減額されたり出ない可能性はありますが、そうではない場合は、他の従業員と同様の評価基準をもってしてボーナスを支払わなければなりません。
社内規則に減額条件が記載されている場合は、それに従う必要がある
一方で社内規則に「退職月に辞めるものは2割減額する」などと記載がある場合は、一般的にそれに従う必要があります。満額を貰おうと裁判をしても、2割程度であればボーナスの減額が法的に認められる判例もあります。
有給休暇を使うとボーナス (賞与) が減るのは違法かどうか
上述したように、ボーナスが減った理由が有給休暇を使ったことであれば、それは違法性が高いと言えます。法的には賃金の未払いが該当することでしょう。
ただし、問題となるのは会社側が「ボーナスを支給するか否かや金額は会社の裁量で決めることができる」と反論してきたときです。
ボーナスをもらって辞めたあとに返還請求がきた。義務はある?
ボーナスをもらって辞めたあとに会社側か返還請求がくることもあります。返還の理由としては「以前出した損失の補填」、「就業規則に『ボーナス月に退職したら返還義務を負う』と記載がある」といったものが大半です。
しかし、これに関しては会社側の違法行為となるため、辞めた従業員は返還する必要はありません。
労働法16条には「賠償予定の禁止」という条項があります。つまり、至急されたボーナスに対して賠償(返還)を負わせるような記述は無効であると判断できます。
有給中や退職月でもボーナスを満額もらう方法を解説!
有給中や退職月でもボーナスを満額もらう方法は「弁護士に相談・依頼する」方法です。弁護士と言えば高いイメージがありますが、退職代行を請け負っている弁護士であれば、成果報酬で依頼を請け負ってくれます。具体的には退職代行の依頼が5~8万円。成果報酬が会社から支払われたボーナス金額の20%が相場となります。
裁判や示談となると、会社側も顧問弁護士が出てくる可能性があるため、個人で裁判を起こすのは少し現実的ではありません。
また、「負けたらどうしよう」と不安に思うかもしれませんが、弁護士に依頼する前にボーナスに関する社内規則を確認してください。会社は必ずボーナスに関する規定を就業規則と賃金規程に記述しています。もし個人で確認しようとしても会社側が見せてくれない場合は、弁護士に依頼することで弁護士側が正式に開示請求をすることができますのでご安心ください。会社の就業規則と賃金規程を確認後、自分がボーナスをもらえる条件をクリアしているのであれば、相手がどんなに強い弁護士を雇っていても、ほぼ間違いなく満額もらうことができるでしょう。
退職するときに40日の有給消化をしたけどボーナスはもらえる?
勤続年数が長い従業員が退職するときは、最大で40日の有給休暇が残っているので、退職日から1ヵ月半前が最終出社日となります。この場合は有給休暇中にボーナスがもらえるか不安ですよね。
しかし、有給休暇中も在職中には変わりませんので、たとえ40日の有給休暇であっても、満額もらうことができるはずです。もし満額もらえなければ、未払い賃金として正当に請求することができるでしょう。
夏と冬のボーナスをもらってすぐ辞めるときの逆算の考え方
夏のボーナスや冬のボーナスをもらい、なるべく早く辞めたい場合は、退職希望日から逆算してみるといいでしょう。
例えば夏のボーナスは7月上旬から中旬に支給されるのが一般的です。仮に退職希望日を7月末日と決めた場合、2週間前の7月15日前後には退職届を出して退職する旨を会社側に伝えておく必要があります。
そのため、15日以前にボーナスが支給されていなければならないことが条件となります。また、15日以降退職日の末日まで有給消化に充てるのであれば、15日までに各種備品の返却、引継ぎ、取引先や会社への同僚の挨拶などを済ませる必要があります。もし「それは少し現実的ではない」と考えるのであれば、素直に8月退職を検討すべきとも言えます。
ちなみに会社の退職日は末日である必要はありませんが、月の途中で辞めてしまった場合、社会保険の自己負担分が増えてしまうので、できれば末日に設定したいところです。
ボーナスもらってすぐ辞めたいけど「円満退職」を希望
ボーナスもらってすぐ辞めたいけれど、「なるべく円満退職したい」と考えている人も多いでしょう。確かに円満退職できれば理想ですが、基本的に会社単位で見れば、ボーナス支給後に計画的に退職する人に対しての風当たりは強いと言わざるを得ません。
ただし、会社を退職してしまえば、その会社との関係性は断たれることになりますし、こちらから連絡を取らない限り会社の人間とすれ違うことすらありません。会社の規定にある退職金は福利厚生の一部となり、そこで働いた従業員が請求できる権利となります。どのような理由があれ、ルールに則って会社は支払わなければなりませんし、従業員は後ろめたさを感じる必要はないと言えます。
円満退職を希望する人は、「本当に円満退職が必要なのか?」と改めて考えなおしてみてください。
ボーナスを支給直後に辞めたい場合はトラブル回避のため「弁護士」に依頼して
上記で紹介したように、ボーナスを支給された直後に退職届を出しても、法的には問題ありません。ただし、会社側が嫌がらせとして満額支給しない可能性は考えられ、また、その場合は法律に基づいて正当に請求・対応する必要があります。
しかし、個人では会社側に主張することはなかなかできませんし、企業が顧問弁護士を雇っていると、こちら側の主張を退けられてしまう可能性もあるでしょう。そのため、おすすめは退職することを決めた時点で「弁護士事務所」に相談することです。
弁護士ならボーナスをもらってすぐ辞める以外も依頼者の希望に沿った対応が可能
弁護士に退職代行とボーナスの請求を依頼すれば、「ボーナス月に退職させてくれない」、「ボーナスが理由もなく減額された」といったトラブルを未然に防ぐことができるので、努めてスムーズに退職し、次の転職活動に備えることができます。
また、それ以外に「残業代を請求したい」、「有給休暇をすべて消化したい」といった希望にも弁護士は対応してくれるので、弁護士に依頼する費用を差し引いてもかなりの額を受け取ることができるはずです。
転職スケジュールに沿って退職のタイミングを見極めることができる
ボーナスをもらってすぐ辞める人の中には、「転職するからスケジュール通りに今の会社を辞めたい」、「退職する日は自分でタイミングを決められるの?」といった希望がある人もいます。
自力で会社側と打ち合わせをすると、大抵は会社の指示する退職日・最終出勤日になってしまいますが、こちらも弁護士事務所に依頼することで、会社側に希望の退職日を交渉してもらうことが可能です。
ただし、法律の枠内で考えると、退職日は最短で2週間後となり、それよりも短いスケジュールで辞めたい場合は、会社の判断に依存します。
ボーナスの支給から退職、転職活動までの流れ
- ボーナスの支給日・就業規則を確認
- ボーナス支給
- 備品の返却準備・引継ぎ等を少しずつはじめる
- 退職日の2週間前に退職代行弁護士に相談する
- 弁護士が会社に連絡し、退職手続きの連絡をする
- ボーナスの支給額に不満がある場合は、退職代行弁護士に対応してもらう
- 退職日までの期間中は有給休暇のため、自宅療養&転職活動をする
ボーナスの支給額に不満がある場合は早期に対応するべき事案となります。相手の出方次第では民事訴訟に発展しますし、示談になったとしても、転職先や普段の生活に支障が出ない範囲で物事を進めなければならないので、なるべく早めに解決の道を模索することをおすすめします。
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