入社時の面接で確認した条件と実際が異なったり、取り交わした雇用契約書と実際の業務内容が違う、といったトラブルに悩んでいる人も多いです。このような場合、会社に何と言われようとすぐに辞めることはできるのでしょうか?今回は退職の可否と解決方法をご紹介します。
目次
あるある?求人票と実際の雇用契約書の内容が違う
アルバイトでも正社員でもよく見かけるのが、求人票で見た条件と実際入社後の雇用契約書の内容が違う、というものです。例えば求人票と休日の日数が違う。職種が違う。給与・年収が違う。などはよく見かける典型的な例ではないでしょうか。
では、求人票で見た条件と、実際の業務内容や福利厚生、待遇が異なる場合の違法性はどうなのでしょうか。
実は違法ではない?求人票と仕事内容が違うことはよくある
一見すると、求人票で見た条件と、入社後の仕事内容や待遇が異なると、違法ではないかと考えがちです。しかし、実は求人票に記載されている条件はあくまでも「見込み」の範疇であり、内定を出したすべての従業員に求人票と同じ条件を当てはめなければならない、という法律はありません。
では、求人票を見て面接に臨んだにも関わらず、実際入社後の仕事内容が違う場合は、泣き寝入りしなければならないのでしょうか。
まずは面接で求人票や雇用契約の中身をしっかりと確認しよう
まず、求人票に記載されている条件のうち、自分が絶対に譲れない項目や、「この条件が違ったら、内定をもらっても入社したくない」というものがある場合は、面接の時点で必ず採用担当者に質問するようにしましょう。企業側が求人票には記載しきれなかった内容や諸条件などもあるかもしれませんし、面接者の希望する条件と、そもそもの求人条件が合致していないこともあります。
面接は企業側が人材を採用する場であることには間違いありませんが、その一方で、面接者も企業を自己採点して選ぶ側であることも忘れてはいけません。特に福利厚生に関しては面接で聞きづらい質問ではありますが、入社後、雇用契約書を交わしたあとだと面倒なことになるため、できるだけ面接の時点で疑問は解消するようにしましょう。
面接でどうしても聞きづらい内容に関しては、転職エージェント担当者に聞こう
とはいっても、休日日数や残業時間などは、面接ではなかなか聞きづらい質問となりますね。その場合は、面接終了後に転職エージェントの担当者に聞いてみるのがいいでしょう。
内定後雇用契約書に署名をして入社に至る。条件が違う場合はどうする?
面接に合格すると内定通知を受け取り、自分が入社の意思がある場合は、雇用契約書に署名をして正式に入社することになります。では、雇用契約書が求人票や面接で言い渡された条件と違うことはあるのでしょうか。
まず、上述したように、求人票はあくまでも「推定」、「見込み」であり、面接での話し合いにより、採用担当者が面接者に沿った雇用契約書を通知します。そのため、求人票と雇用契約書が違うことは基本的に「あり得る」と言うことができますし、こちらは違法ではありません。
面接でも同じことが言えますが、面接で話した条件が雇用契約書に反映されていない、あるいは雇用契約書と違う場合は、署名をする前に再度確認をした方がいいでしょう。ここまで来たら、「そんなこというなら内定取り消すよ」とは言われることはありませんので、堂々と質問してかまいません。
そして、もし面接の内容が雇用契約書と違い、それが自分にとって入社できないほどの重大な事由であるならば、雇用契約書に署名はしないで、内定を取り消してもらう手続きをしましょう。これは相手企業側も少々驚くでしょうから、転職エージェントの担当者に先に連絡をして、伝えてもらうのもいいでしょう。重要なのは「雇用契約書に署名をしない」ことです。
雇用契約書と基本給・給与が違う場合は重大な違法
雇用契約書及び労働条件通知書には、従業員として勤務する際の詳細な条件が記載されており、基本給など給与体系も詳しく記載があります。
もし雇用契約書や労働条件通知書の記載と基本給及び毎月の給与の計算方法が違う場合は、これは立派な違法となります。雇用契約書に基づいて差額分を請求することができますし、雇用契約と基本給・給与が違うことを理由に、即労働契約を解除して退職することもできます。企業側には就労規則を用意していて、退職の手順やルールなどもあるでしょうが、それはすべて無視してかまいません。
ちなみに、既に入社して月日が経ったあとに、給与計算方法が違うことに気づいた場合も、上記と同じようにこれまでの差額分をすべて請求することができます。ただし、請求できる期間は遡って2年間となり、それ以前は時効となっているのでご注意ください。
雇用契約書の記載と賞与(ボーナス)の条件や額が違う
雇用契約書に記載されている条件と賞与が違うこともあります。例えば面談で聞いていた賞与の額が異なったり、支払い月がずれていたりする場合もあります。このような場合は、会社側は何かしらのペナルティは発生するのでしょうか。
会社側が雇用契約書に記載しなければ法令違反となるのは、下記事項となります。
・労働契約期間
・勤務地/就業場所
・業務内容
・始業/終業時刻と
・賃金の支払い方法
・退職/解雇条件や方法
一方で、雇用契約書に記載する必要がない事項は下記となります。
・昇給
・退職手当の支払い方法や計算式
・職業訓練事項
・休職事項
などとなります。では、賞与(ボーナス)はどちらに当たるのかというと、雇用契約書に記載する「必要がない」事項となります。賞与はあくまでも企業が売上などを目安に従業員のモチベーションを上げるために支払うものとなりますので、雇用契約書への記載は必要ありませんし、面接時で伝えられた賞与の額と実際が異なったとしても、それによって企業が責任を負う必要はないと考えられています。
雇用契約書と休日の条件が違う!割り増し手当や給料差額を貰うことも可能
雇用契約書に記載されている休日の条件が実際と異なる場合もよくあるパターンです。雇用契約書には「土日祝休み」、「月曜~金曜就業」と記載されているにも関わらず、実際は隔週で土曜出勤があったり、繁忙期に祝日の出勤を強要されることもあります。
雇用契約書に記載のない休日出勤は変形労働時間制を取り入れていない限りは出勤の義務がありません。会社側は36協定を締結したのち、もし休日出勤をさせたい場合は25%の割増賃金を払うか、個別契約を結び代休取得をさせる課する必要があります。いずれも従業員の同意が必要となるので、もし従業員が休日出勤に同意しないのであれば、即労働契約を解除することができます。
会社の辞令で赴任してしまっているときはどうする?
雇用契約書の記載事項に違反している場合は、上記の通り、従業員は即時労働契約を解除することができます。もし会社の辞令で遠方に赴任してしまっている場合は、引っ越しをしなければなりませんが、実はその引っ越しに架かる費用は会社が負担しなければなりません。
雇用契約書と勤務時間が違うのは違法か否か
続いてご紹介するのは、「雇用契約書に記載されている勤務時間と実際の勤務時間がまったく違う」場合です。業界や業種によっては、客先都合や締切納期といった理由で、雇用契約書に記載の勤務時間通りでの就労ができないこともあります。
例えば雇用契約書には「9:00~18:00」と記載されているにも関わらず、実際は「8:00~17:00」、「11:00~20:00」といった勤務時間の違いがある場合、これは違法かどうかという問題です。まず、雇用契約書もしいくは労働条件通知書の勤務時間の欄に、「業務の都合により異なることもある」にような一文があるかどうかを調べてみましょう。
もしある場合は、違法とは言えなく、従業員は変則の勤務時間に対しても同意していることになります。
一方で記載のない場合は違法性があると言えますので改善を要求することが可能です。
また、ここで重要となるのは、勤務時間ではなく「労働時間」は同じであることです。
例えば勤務時間は変則的であっても、労働時間は記載の通り1日実働8時間であり、残業があっても労働法に基づいて決められ、正当な残業代を支給している必要があります。例えば1日6時間労働との記載があるにも関わらず、実際は8時間労働を常にさせている場合は重大な違法となります。
雇用契約書と勤務日数が違う場合は休業分を請求できる
雇用契約書の記載事項と実際の勤務日数が違うケースも考えられます。特にコロナ以降は人員を余してしまう業界も多いですし、余剰人員に対して待機してもらい、仕事が入ったら働いてもらう、といった不安定な会社も増えてきました。
しかし、これは労基法26条「使用者の責に帰すべき事由」に該当し、違法となります。簡単に説明すると、仕事がなかったり人員が余剰である責任は従業員にはまったくないため、もし従業員を休業させる場合は、会社側が彼らの生活を保障するため、給料の6割以上を支払う義務があるというものです。
注意点としては、お互いの合意があれば、雇用契約書と勤務日数が違う場合でも合法となります。休業が納得できなかったり、その分の賃金を請求したい場合は、会社側と勤務日数が違うことについて同意してはいけません。
雇用契約書と業務内容が違う場合は即退職できる?
雇用契約書、及び労働条件通知書に記載されている業務内容と、実際の業務内容・仕事内容が違うケースも良く見受けられますね。「人事で採用されたはずなのに、入社後の適性検査でなぜか営業職に回された」のような案件はしばしば問合せがあります。
こちらの違法性に関しては、労働基準法 第15条の「労働条件の明示」に抵触します。雇用契約書及び労働条件通知書には、従業員の仕事の範疇をしっかりと明示し、それを守らなければなりません。もし雇用契約書と違う場合は、企業側は30万円以下の罰金刑に処されます。
会社側と一度話し合い、雇用契約書に沿った業務内容に変更してもらうようにできればいいのですが、もし難しい場合は、雇用契約の違反となりますので、即退職をすることができます(労働基準法第119条:6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑)。
ハローワークで就職したけど雇用契約書と違う場合はどうすればいい?
ハローワークを通して企業から採用通知を貰ったが、労働契約書に記載している条件・内容が求人票や面接と違う場合もあります。ハローワークに出している企業は、転職エージェントに広告を出す資金のない零細企業が多いため、中には意図的に求人票や面接では嘘をついて入社を促す悪質な企業もあります。
ただし、こちらも上記でご紹介したように、雇用契約書と実際の業務内容や福利厚生が違う場合は、労働基準法 第15条の「労働条件の明示」に違反します。まずは最寄りのハローワークに問い合わせをして事情を話してください。ハローワークの担当者から企業側に是正勧告があります。
また、従業員は即日で辞めることも可能ですので、働き続けたくない人は、すぐに退職することができます。
雇用契約書と条件が違うのは労働法15条に違反!即時退職ができる!
雇用契約書と実際の業務内容や福利厚生が異なるのは、労働法15条に違反し、下記の通り即時退職ができます。
もし入社するために居住地を転居している場合は、企業側は退職する従業員の引っ越し費用も負担しなければなりません(退職後14日以内に引っ越しをする場合)。
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2.前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
労働基準法 第15条
雇用契約書と勤務時間やその他条件などが違う場合の解決策
雇用契約書と勤務時間や上記で解説した諸条件が違う際は、労働契約の無条件解除をすることができます。しかし、なかなか一介の従業員が上司や会社に向かって法律を振りかざして訴えることはできませんよね。仮に会社に伝えることができても、会社側がおとなしく同意するとも限りません。
その場合は「退職代行」に依頼してみてはいかがでしょうか。退職代行に依頼すると、代行担当者が変わって会社に退職の手続きや残業代や給料の差額、必要書類の請求をしてくれます。
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