ブラック企業を辞めたくても自力では辞めれない。そんなときの解決方法として「退職代行」が挙げられますが、退職代行を使っても辞められないことはあるのでしょうか。
今回は退職代行の失敗例やトラブルの回避方法、退職代行業者の選び方などを具体的に紹介します。
目次
退職代行サービスの失敗例。辞められないケースは「本人と会社側が対話してしまう」
退職代行を使っても辞められない失敗ケースの1つとして挙げられるのは、依頼者本人が会社側と折衝してしまう場合です。退職代行を使ったあとは、原則会社の先輩上司や担当部署、社長とは会ってもいけませんし、電話での会話もNGとなります。電話がたくさんかかってきても、基本は無視をするか、「退職代行の担当と話してください」としか言ってはいけません。それを守らないと失敗や無用なトラブルの原因となってしまいます。
なぜなら依頼者は往々に法律に関する知識が不足していますし、パワハラ上司など会社の人から脅されるようなことを言われたら、それについ従ってしまうからです。
「退職代行を使って状況を悪くしているのは貴方の方だよ」
「退職代行の利用が終わったら、正式に損害賠償請求をするからね」
「社長が直接会って話せば、話をいい方向へ持っていくよ」
などと言われたら、ついつい話に乗ってしまいます。退職代行は交渉を代行するため、もし本人が一時の気の迷いから「もう退職代行は大丈夫です。なんとかこちらで解決できそうです」と退職代行を断ってしまったら、代行業者はそれ以上何もすることができません。
このような場合、結局会社を辞めることに失敗、もしくは辞めることはできても、退職日までいびられる毎日を過ごし、残業代や退職金も出ず、有給休暇も使わせてくれない、そんな条件をなくなく呑むことになりそうです。
業者の連絡・対応を無視されるトラブルも退職代行の失敗例
ブラック企業が相手の場合は、退職代行業者も法律の専門家である弁護士事務所への依頼が必要です。一般の民間業者や労働組合加盟の退職代行業者は、いずれもブラック企業には太刀打ちすることができなく、辞められないで失敗するケースが多くあります。
業者からの連絡がすべて無視されたり、一向に退職の手続きをしない、「損害賠償を請求するために訴える」と頑なに業者の介入を拒んでくる場合、弁護士以外ではどうすることもできないのが現状で、平行線を辿るだけで、依頼者はいつまで経っても辞められない状況に陥ります。これは失敗例の典型です。
もちろんそのようなブラック企業は全体から見ると少数ですが、その一方で、そのようなブラック企業で働いている人が、藁にも縋る思いで退職代行に依頼してくるものです。
「損害賠償を請求する」と言われたら民間業者だと失敗する可能性がある
相手企業が「損害賠償を請求する」と脅してきた場合、法律的にはよほど依頼者に過失がない限りは損害賠償を払うことはありませんし、むしろパワハラの慰謝料を請求できる立場になります。しかし、それはあくまでも弁護士が法律を元にうまく立ち回って交渉をすることが条件となり、基本的な労働法しか知らない民間業者は法律を介した交渉術は知りませんし、裁判の流れなども把握していません。
もし相手企業がそれを見透かしていれば、本当に裁判まで発展する可能性もありますし、そうなると民間業者は業務範囲外となり、退職代行の失敗となります。
相手に法律の専門家がいる場合は、失敗・辞められないリスクがある
企業によっては顧問弁護士や行政書士が在籍しているケースもあります。法律に詳しい専門家が企業側についている場合は、こちらも法律のプロである弁護士の退職代行に依頼するのが失敗しないポイントとなります。
基本的にこの手ケースで相手企業の顧問弁護士が裁判や損害賠償を請求するといった手段には出ません。あくまでも示談で内々に問題を解決したいと考えていますが、ブラック企業の社長次第ではどう転ぶかは分かりません。
不測の事態や臨機応変立ち回りができない民間企業の退職代行サービスでは、往々にブラック企業相手には失敗しやすいといえます。
未払いの残業代や退職金の請求交渉で失敗するリスク・トラブルはある?
弁護士の退職代行サービスを利用する際は、会社の退職だけではなく、以下各種請求交渉も依頼が可能です。
- 未払いの残業代の請求交渉
- 退職金の請求交渉
- パワハラによる慰謝料請求交渉(損害賠償請求)
まず、未払い残業代を請求する際は、依頼者が残業をした証拠が必要です。周りの証言や主観的な意見だけだと失敗するため、弁護士も請け負うことができません。証拠はタイムカード以外にも、夜遅くまで会社にいたことを示すだけでかまいません。例えばパソコンに表示されている時刻やPhotoshopなどの使用履歴、「今夜は残業です」、「じゃあ鍵閉め忘れないように」といった上司とのやり取りなどでも構いませんし、手書きのメモ(継続性が必要)でも交渉できます。
退職金の請求に関しては、そもそも会社側に退職金制度がなければ交渉の余地はありません。また、退職金の受給額を不当に下げられた場合も交渉できますが、失敗を避けるために就業規則にある退職金の項目に目を通す必要があります。
パワハラの慰謝料に関しては、音声で立証できればほぼ確実にこちらの言い分が通りますが、証拠がない場合は言った言わないの水掛け論になってしまったりする失敗のリスクがあります。
退職代行の弁護士に依頼すべき理由:有給消化に失敗する可能性がある
ご存知の人も多いかと思いますが、有給休暇の消化は労働者(社員)の義務となります。よくある事例として、企業の上司が有給消化させてくれないケースがありますが、法的には違法となり、社員の有給申請を拒む権利は上司や会社にはありません。
通常、退職代行を依頼すると、退職日までの期間中は有給消化に当てることができます。しかし、退職代行業者が弁護士以外の民間業者や労働組合加盟業者の場合、法律の代理交渉ができないため、有給消化や退職が無効になるリスクがあります。
弁護士と一般企業、労働組合加盟業者の退職代行費用はせいぜい1~3万円程度しか変わりませんので、失敗・トラブルなく退職するためには弁護士の力を借りるのが推奨されます。
派遣が退職代行を利用。交渉の失敗やトラブルはある?
労働法の適用外となる派遣社員も退職代行サービスは利用できます。むしろ、近年は派遣切りをはじめ、派遣を不当に扱う企業が多く、派遣社員の退職代行の相談は非常に増えています。
有期雇用の派遣は、一般的なイメージとしては「契約期間内は辞められない」と考えられています。しかし、実際は派遣社員であっても、契約期間内でもいつでも辞めることが可能です。
ただし、派遣の退職代行で失敗したりトラブルが発生するとしたら、考えられるのは「依頼主が派遣元ではなく派遣先に退職代行を使う前に辞めたい旨を伝えてしまう場合」です。派遣先の上司に最初に伝えてしまうと、上司は派遣元に怒り、「彼は辞めるみたいだけど話と違うじゃないか」と契約違反であることを責めます。通常は派遣元が即代わりの人間を送り込むのですが、運悪く代わりのスタッフが見つからない場合、契約不履行となってしまいます。
すると、派遣元は辞める派遣社員に対して「君が突然辞めたから契約違反を先方から攻められている。損害賠償を請求するからね!」と怒鳴りつけることがあります。
法令的には派遣社員が退職することを想定しておらず、代わりを見つけられない派遣会社に責があり、退職代行を使った派遣社員は賠償金の支払いは必要ありません。しかし、突然賠償請求されると、頭が混乱してしまい、退職代行の担当者を責めたり、「退職に失敗したらどうしよう」、「退職できても賠償金を払うんじゃ意味がない」とパニックに陥ってしまいます。
賠償請求が絡んできそうな事案は、労働組合加盟業者含む民間業者は手を出すことができませんので、原則弁護士へ依頼することになります。もし労働組合加盟の退職代行業者に依頼してしまうと、退職後の賠償金のドタバタ時には「うちは賠償金の交渉はできません」と手の平を返されるかもしれませんよ。
労働組合加盟の退職代行業者は何が違う?失敗のリスクは一般業者と同じ理由
昨今の退職代行業者を見てみると、「労働組合加盟だから信頼・安心できる」といった業者が増えてきました。労働組合加盟業者と聞くと、なんだか非営利団体でオフィシャルっぽさがあるため信頼してしまいがちです。
しかし、労働組合にはどの一般企業でも加盟できますし、このような業者は労働組合に従事する実態がなく、むしろ信頼性に疑問があるところが多いです。
一般企業が退職代行のような金銭交渉をすると非弁行為と違法性が高くなります。それを避けるために、一般企業でも金銭交渉ができる労働組合に加盟したというだけなので、性質は普通の退職代行業者と変わりませんし、残業代や退職金、慰謝料の請求等をして、相手企業が素直に払わなかった場合は労働組合加盟業者では成す術がありません。
看護師の退職代行利用。失敗やトラブルはある?
昨今、退職代行の問い合わせが急増している業種の中に看護師が挙げられます。看護師が退職代行を利用すると聞くと、なんだか違和感があるかもしれませんが、病院はまさにブラック企業の中枢とも言っていい業種です。特に看護師は医師と異なり給料が低く、到底業務と責任に見合った額とは言えません。さらに看護師長をはじめ、先輩たちからいじめに遭うことも普通ですし、シフト制のため、プライベートのスケジュールがまったく立てられない病院もしばしばあります。
看護師が退職代行を利用して失敗やトラブルが発生するとしたら、まず考えられるのは「看護師が退職代行担当者との打ち合わせに反した行動をとってしまうこと」と「大学病院の看護師の退職代行」です。
看護師の中には退職代行に依頼したあとも同僚や先輩と連絡をとってしまったり、急患だからという連絡が入りついつい出勤してしまう人もいます。病院を退職する際は、民法に即して「退職を告げた2週間後に労働契約を解除する」方法をとるのが一般的ですが、看護師が出勤してしまったり、看護師長や院長と退職について話し合ってしまうと、話したその日から再び2週間延びてしまい、一向に辞められないトラブルに陥り、退職に失敗してしまうことがあります。
また、大学病院の退職は看護師長だけではなく教授まで退職の通達をしなければなりませんが、それがうまくいかないことも考えられます。「退職はできたけど、離職票などの書類が送られてこない」といったトラブルはよくあります。離職票が送られてこないとハローワークで失業保険の申請ができませんし、最悪書類上はまだ病院を退職していないことになっているかもしれません。こちらも失敗といえるでしょう。
悪質な退職代行に依頼すると失敗・辞められないことも多い
退職代行業者に依頼したものの、分が悪くなったためか、突然契約打ち切りのメールが届き、こちらから連絡をとってもすべて無視。結局会社の上司に呼ばれ、さんざん嫌味や叱咤をされて自力で退職……、といった問い合わせも実は時折当サイトに届きます。実はこれは民間の退職代行に依頼した際の典型的な失敗例でもあります。
退職代行業者とはLINEのテキストチャットで連絡を取り合うのが普通なので、電話をしても通じないのが普通ですし、テキストチャットも既読スルーであれば、手の打ちようがありません。
近年は民間の退職代行業者が非常に増えてきて、1万円や2万円といった格安を謳う業者も目立つようになりました。そのため、中には劣悪なサービスを提供する悪質な退職代行業者もいます。法律を駆使したサービスは、本来弁護士の業務領域となるにも関わらず、自称中級者の民間業者が立ち入ると、上記のようなトラブルは度々発生します。
退職代行の「弁護士監修」の落とし穴。失敗・辞められないこともある
退職代行業者の中には、「弁護士監修」、「顧問弁護士」を謳っているところもあります。しかし、弁護士が監修していても、業者の顧問であっても、実際交渉することができるのは弁護士となりますし、このような退職代行業者は、マージンを弁護士に支払って名前を使わせてもらっているだけであることがほとんどですので、実際の交渉に弁護士が当たるわけではありません。
そのため、仮に話がこじれて裁判に発展しそうになったり、相手企業が有給を使わせない、残業代や退職金を払わない、といった暴挙に出たとき、これらの退職代行業者は打つ手がなくなり、依頼者も辞められないで失敗する事態に陥ります。「退職に失敗したら全額返金」と謳う業者も多いですが、業者からしてみたら、自社の主業務で失敗して依頼者を困らせたにも関わらず、数万円を返金するだけで事が済むのであれば安いものです。
退職代行でも失敗することも辞められないこともある!だからこそ業者は弁護士を選ぶべき
今回ご紹介したように、退職代行に依頼しても失敗して辞められないことがあります。退職代行業者も年々増えてきており、価格競争も激化しておりますし、一般の民間業者が労働組合に加盟して付け焼刃の交渉術を振りかざす場面も見られます。
これから真剣に退職代行に依頼することを検討している方は、万が一辞められないことも考慮して、価格だけで決めるのではなく、失敗する心配がなく本当に辞められる弁護士に依頼するようにしましょう。
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