以前より医師・医者の労働環境の過酷さは社会問題として指摘されていました。医師によってはうつ病や過労死の現実もあるため、現時点で「医師を辞めたい」と考えている人は、辞める方法と転職方法を模索するといいでしょう。ここでは医師の退職理由と転職の可否、そして辞める方法をご紹介します。
目次
医師を辞めたいと感じる人の割合はどのくらい?
28万人以上の医師が登録する「m3.com」のアンケートによると、これまで医師が仕事を辞めたいと感じたことがある人は「34.4%」であることが分かっています。ただし、少々驚くかもしれませんが、医師を実際に辞める、いわゆる離職率の割合に関しては一般企業以下であることはご存知でしょうか。
ちなみに、「病院を辞めて別の病院に移る」といった勤務先の変更をする医師は一般企業よりも割合ははるかに多く、数年おきに職場を変える医師も普通にいます。ここでいう医師を辞めるとは、医師免許が必要な職務から身を引くことを意味します。
女医が辞めたいと考える人が多い理由とは
女医が医師を辞めたいと考える人は、男性よりも1割以上多い傾向にあります。女医の中で出産と育児を経験した人は、1年以上のブランクが発生するため、外科医などたゆまぬ経験がものをいう職種では、「不安でメスが持てなくなった」という女医も普通にいます。ただし、女医の多くは医療業界を辞めるのではなく、内科医や町医者のように落ち着いた職場環境を新たな勤務先と選ぶ傾向にあります。
医師・医者が仕事を辞めたい理由がパワハラやセクハラの場合
まず、医師・医者 が仕事を辞めたい理由が、自己都合ではなくパワハラやセクハラの場合はどうすればいいのでしょうか。医師の世界は序列が厳しく、上のものはとても強い権力を持ちます。上司の意見に逆らうと、地方に飛ばされたり、首になることもざらです。そんな医師・医者の仕事に嫌気がさす人も多く、「もっと小さな病院で働こうかな」、「やりがいのある職場を見つけたい」と、医師を辞める人が増加しています。
医師・医者を辞める場合は、そのまま退職届を出して辞めるか、もしくは、賠償請求を病院側か個人にするかが考えられます。もし慰謝料を請求する場合は、証拠が必要となります。そのため、仕事を辞めたいと考えたときからパワハラの証拠をメモや音声で集めておくといいでしょう。同僚などの「証言」は信憑性にかけてしまうのでおすすめできません。
医師・医者を辞めたい原因が仕事の激務や人間関係の場合
一方で医師・医者を辞めたい原因が仕事が激務であったり、職場の人間関係で合ったりする場合はどうすればいいのでしょうか。仕事が激務かどうか、または職場に理不尽な人の有無は、病院によって本当に変わってきます。また、一介の医師が職場や仕事の改善を訴えたところで、状況が好転することはまずありません。
そのため、このような状況に置かれている場面でも、やはり職場環境を変える=退職することが妥当の決断と言えそうです。
医師・医者を辞めたい理由が「ライフスタイルの変化」の場合
医師・医者が病院を辞めたい理由が「私生活を充実させたいから」、「子供が生まれたので育児の時間を取りたい」、「土日休みが欲しい」といった場合はどうでしょうか。病院によっては土日休みを保証してくれるところもありますし、クリニックではシフトではなく毎日定時となるので、職場環境は決して悪くありません。そのため、日勤と夜勤に分かれる病院で働いている医師は職場を変えることをおすすめします。
医師・医者を辞めたい理由が「訴訟のリスク・責任の重さ」にある場合
医師・医者を辞めたい理由が、訴訟を起こされて賠償請求されることの怖さや、人の命の重みに耐えられなくなった場合はどうでしょうか。あまり知られてはいませんが、近年は訴訟リスクも高まっていて、1年でおよそ800件近く医療関係の訴訟が起こされています。自分の不注意の場合は病院も守ってくれないかもしれませんし、医師・医者に賠償請求の裁判を起こされる可能性だってあります。
人の命を助けたいがために医師・医者になったにも関わらず、その患者親族から恨まれてはかないません。「やっぱり自分は医師に向いていなかったのかな」と思わずにはいられませんね。
そんなときは、頼りになる先輩や上司に相談してみてはいかがでしょうか。上記の悩みは誰もが一度や二度はぶつかる壁でもあります。乗り越えられた先には医師・医者としての大きなやりがいを実感できるでしょうし、また仮に乗り越えずに、医師・医者を辞めたい、という判断を自分に下しても、誰も責めることはしないはずです。
プレッシャーに負けてしまうことを恥ずかしいと思わない
医師・医者は自分の1つの判断ミスが患者にとって取り返しのつかない事態へと発展してしまうことがあります。また、外科医であれば患者の身体にメスを入れることになるので、上述したように患者関係者から逆恨みされるようなリスクを背負いながらプレッシャーと戦わなければなりません。
そういったプレッシャーに負けてしまい、「もう医師を辞めたい。これ以上続けられない」と考えに至ることは決して恥ずかしいことではありません。
そういったプレッシャーに我慢し続けてしまうと、徐々にうつ病や適用障害の入口に進んでしまうかもしれません。
医師・医者を辞めたい理由が「やりがいがない」、「成長できない」と感じたとき
医師・医者を辞めたいと考える人の中には、「やりがいが見つからない」という人も少なくありません。自分のやりたい科で働けない医局や、患者が少ない田舎勤務の医師にそう考える人が多い傾向です。
医師・医者の中には医学部で勉強しているときから勤務後の職場風景を強くイメージしている人も多くいます。実際の職場環境や上司との人間関係にギャップが生じた際は、やりがいを見つけることができなく退職を決意することになります。
また、田舎の小さな町医者や小規模クリニックでは経営を維持するのに一杯一杯で、自分のスキル向上や成長する時間が取れないことも退職に繋がる一因となります。特に若い医師・医者は自分のやりたい業務内容を明確に持っていますし、田舎やクリニック独特のゆったりとした時間に退屈を覚えて、「ここでは成長できない」と感じる人も多くいます。
大学病院の医局の医師を辞めたい場合。メリットとデメリットを考える
医師・医者の中でも大学病院の医局に勤めている方は、辞めるまでの道のりが非常に茨と言われています。大学病院の医局で働く医師が辞める場合は、まずは直属の上司に理由を話さなければなりませんが、もし医局を辞めたい理由がその上司にある場合は、上司を飛ばして医局長や教授に直接伝えることもできます。ただし、1回や2回の面談で辞められない可能性が高いため、医局を辞めるときは決意を持って退職に臨んでください。
医師・医者が医局を辞めるメリット
医師・医者が医局を辞めるメリットとしては、「転職先は多くの場合で年収アップが望める」、「職場の環境が改善される(働きやすい)」、「プライベート(休日)を確保することができる」などが挙げられます。医局ならではの人事や昇格といった野望は転職先ではなくなってしまいますが、自分の生活を心身ともに充実させたいと考えるならば、医局勤務の医師・医者は辞めるのも一つの手かもしれません。
医師・医者が医局を辞めるデメリット
一方で医師・医者が医局を辞めるデメリットとしては、「学位が取得できない」、「最新の医療技術を学べない」、「海外留学が難しい」などが挙げられます。しかし、現時点で医局を辞めたいと願っている医師・医者からすると、上記のデメリットなど取るに足らないものであることがほとんどです。それ以上に「そんなの必要ないから一刻も早く辞めたい!」と感じていることでしょう。
医師の仕事を辞める場合は、いつ頃退職届の提出、及び上司への報告がおすすめ?
医師・医者の仕事を辞める場合は、上司への報告と同時に退職届の提出が必要となります。医師を辞める時期は、基本的に「人事異動が行われる月の3か月から半年前」程度が普通となります。ただし、医局の場合は「半年から1年前」に報告するのがベストとも言われています。
大学病院や総合病院といった大きな病院勤務の医師の場合、直接の上司が退職届を権限を持つ担当者や院長に渡してくれないケース(嫌がらせなど)もあります。そのため、できれば退職を処理してくれる担当の人にも伝えておくのがいいでしょう。
医局と町病院では医師・医者の辞め方に大きな違いがある!
医局は大学病院ですので、上司は医局長であり、退職を許諾するのは教授となります。春先には人事の調整が毎年行われるのが普通なので、辞めるとしたらこの段階となります。しかし、突然辞めたいと申し出ると、誰もがびっくりして、引き止めるだけではなく腹を立てることでしょう。
そのため、辞める数か月ほど前から、先輩や医局長にそれとなく退職を匂わせる会話をしておくと、いざ退職を申し出た際にも「あーやっぱりか」と納得してくれます。基本的に医局では医師・医者や看護師が3月末で大勢退職するため、それを見越して秋頃から採用活動をはじめます。
一方で普通の町医者やクリニックの場合は、小さな派閥はあっても、医局のような堅苦しや超特殊ともいえる形式はありませんので、サラリーマンと同じような感覚で院長に退職届を出せば大方が済みます。
病院側から圧力があって仕事を辞めたいけど辞められない医師の場合
病院側から「人員が足りない」、「辞めたら別の分院や繋がりのある病院に連絡して、お前を雇わないようにする」と病院を辞めたいけど辞められない可能性もあります。
基本的に医師も民間企業で働く労働者なので、労働法が適用されます。労働法によれば、退職届を出した2週間後に仕事を退職することができます。これは病院側が退職届を受理するかしないかは関係なく辞めることができますので、「退職届は保留する」とよく聞く言葉も、実際は意味がありません。「私は退職の旨はきちんと伝えましたから」とだけ言えばいいでしょう。それでも嫌がらせなどを受けて辞めさせてくれないようであれば、弁護士に相談するのも有効です。いままで頑固だった上司や病院側が手の平を返して退職を認めてくれるでしょう。
本当に辞めたい場合は教授と対立することも視野に。医師免許さえあればいつでも復帰できる!
もし病院や上司、教授側と揉めるようであれば、円満退職をしようという考えは捨てて、まずは対立してでも辞めることを第一に考え、行動に移しましょう。その教授がいる医局や分院への就職は厳しくなりますが、それ以外の病院であれば教授の力も届きません。
医師・医者は医師免許さえあれば、いつでも返り咲くことができることを覚えておくと、腹をくくりやすくなります。
すぐに転職したい医師・医者は内定先を決めておこう
いまの病院を辞めたいけど、医師は続けたい、という場合は、病院を辞める前に転職先を決めておくといいでしょう。昨今は新型コロナもあり、面接に行く必要なくzoomなどパソコンのビデオチャットで採用する病院もあります。基本的に人手不足の病院が多いので、内定先に困ることはないはずです。
ただし、小規模の病院は人手不足にもかかわらず人件費削減のため事務方を雇うことを嫌うため、いまよりも厳しい職場環境が待っている可能性も考慮しておくといいでしょう。ただし、転職先が決まっていても、今働いている病院の上司に伝えてはいけません。裏で手を回して採用を辞めるように通達する可能性もあります。
医師が転職したい場合の注意点
医師が今の職場を辞めて転職を希望する場合は、職場環境や待遇に妥協しないようしましょう。病院によって職場環境や従業員の上下関係は雲泥の差がありますので、転職希望先が近場にあれば、実際に足を運んでみたり、口コミを確認してみたりと、転職エージェントにまるっきり頼らないようにするのが、医師が転職を成功させるコツとなります。
医師はもう辞めたい!そう感じる人の医療業界の転職先とは
医師はもう辞めたいけれど、医療業界には携わりたい、と言う人はどんな職種が考えられるのでしょうか。おすすめの転職先は「メディカルドクター」です。製薬会社で働き、薬の開発や安全性の調査などが主業務となります。裏方の仕事となりますが、大手製薬会社に転職できれば年収はそれほど下がることはないでしょうし、土日祝の休みも確保することができます。
また、「上司とそりがあわない」、「病院の方針についていけない」で医師を辞めた人は、いっそのこと「開業医」になる道もあります。
業務委託の勤務医師が病院を辞めたい場合の注意点
医師の中でも、最近は業務委託の医師も増えてきました。テレビドラマの「ドクターX」のような、いわゆるフリーランスですね。この業務委託の医師が病院を辞めたい場合は上記で紹介したように2週間後の退職はできません。業務委託の医師は、当初の契約に記載された契約期間をまっとうしなければなりません。
ただし、契約期間の具体的な記載がなく、無期限と判断できる内容の場合は、労働法が適用されて2週間後の退職ができる可能性があります。自分では判断できませんので、弁護士に依頼するといいでしょう。
弁護士含む退職代行に依頼すれば驚くほど速く辞められる!
医師の間ではあまり聞きなれないかもしれませんが、民間企業に勤める社員の間では一昔前から浸透している退職代行。医師の場合は退職代行を請け負っている“弁護士”に依頼することとなりますが、仮に依頼すれば、最短2週間後に医師を辞めることができます。
また、パワハラを受けている場合は慰謝料の請求もできますし、退職金だって受け取ることができます。ただし、退職代行を使う場合は、基本は弁護士が病院側に退職の連絡をした日から、医師は病院に行くことはしません(行きづらいので)。そのため、退職代行を利用することを決めたら、まずは病院にもう行く必要がないように、あらかたの引き継ぎを終えておくといいでしょう。
医師・医者を辞めたい場合の退職代行の流れ
医師・医者を辞めたい場合の退職代行の大まかな流れは下記となります。
1.引継ぎのシートなどを自作して、いつでも辞められるようにする
2.返却すべき備品はロッカーや机に置いておく
3.退職代行にLINEで問い合わせをする
4.LINEのテキストチャットで相談・依頼・払い込みを行う
5.退職代行の担当者が病院側に連絡する日(辞めたい日)を決める
6.当日、退職代行側が病院に連絡をして、退職の手続きを進める
7.10日から2週間をめどに、離職票、雇用保険被保険者証、年金手帳、源泉徴収票などが返送される
有給休暇や未払いの残業代、退職金が発生する場合
もし病院を退職するときに、有給休暇や未払いの残業代、退職金を請求したい場合は、その旨も退職代行に告げなければなりません。有給休暇の消化は病院側からすると嫌がられますが、労働者の権利となるので、しっかりと取得手続きをするのがいいでしょう。
ちなみに退職代行が金銭の支払い請求を行う場合は、弁護士事務所に問い合わせをすることになります。退職代行を請け負っている弁護士事務所もありますので、是非一度相談してみてください。LINEチャットで無料相談ができますよ。
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